2001年2月12日
ますます激化する世界的競争の中で、関西が活力あふれる地域でありつづけるためには、新企業・新事業の創造による経済の活性化が不可欠である。今後とも関西が人々に住みやすく文化の香る地域でありつづけるためにも、関西は創意あふれるベンチャー企業が多数育つ地域でなければならない。関西ベンチャー学会は、関西をベンチャー精神に富んだ社会とするために、ベンチャー起業家、ベンチャー支援担当者、ベンチャー研究者たちが一堂に集まり、意見と情報を交換し、取るべき政策等を研究する場として設立された。
関西ベンチャー学会は、ベンチャーを学問的に研究するとともに、関西をベンチャーの叢生する地域とするため、ベンチャーの担い手に研鑚の場を提供するとともに、種種の政策の提案や社会に正しい認識をもってもらうための働きかけなどを行う。具体的には、
- ベンチャー企業それ自体やベンチャーが育つ社会環境等の研究
- ベンチャー育成とベンチャー叢生に関する政策の研究
- ベンチャー企業家や起業希望者たちに資する知識の集合と体系化
- 大学等のもつ高度の知識や技術を社会に生かしていくための仕組みの創出
- ベンチャーに関する社会の正しい認識を育てるための活動などを行う。
上記の目標を達成するため、関西ベンチャー学会は、以下の方針のもとに活動を行う。
- 学会は、学者・研究者に限定することなく、ベンチャー起業志望者や、ベンチャー起業家、ベンチャーの支援者などベンチャーに関心をもつひとびとに広く開かれたものとする。
- 学会の運営にあたっては、自主的に運営される分科会活動を主とし、各会員の専門的関心に即した研究や活動を深めていく。
- 関西ベンチャー学会は、日本ベンチャー学会や関西の各種経済団体と協力してその事業を遂行していく。
設立趣意書
2001年1月19日
関西経済がGDPに占める比率は現在17.2%程度である。1920年代から1970年頃まで素材型産業や家電産業を中心とした関西経済は全国的にみても優勢であった。けれども、関西経済は高度成長期後の経済サービス化・ソフト化などへの対応が遅れたせいもあり、事業所数の減少傾向が続いている。いまや産業再生や新産業・新事業創造あるいはそれと結びついた雇用機会の創出や都市・地域社会づくりが関西地域にとり喫緊の課題といえる。
一方、技術変化、規制緩和、消費者嗜好の変化などが新しい事業・産業の台頭を誘発しつつある。技術やアイデアが既知であっても、より限定された規模の市場ニーズに対する事業を展開する発端は小企業や先取的行動をとる企業の働きかけに帰因することが多い。こうした観点に立つと、特定の技術やアイデアなどへの独自の取り組みを基礎にして、新事業を展開するベンチャー企業を多数輩出することが地域産業の活性化や新規事業展開の呼び水となるであろう。
さらに、IT(情報通信技術)の一部やバイオ医薬の開発など高度な技術を背景とするベンチャー企業の多くは、しばしば大学や研究機関と緊密な連携関係にある。その意味では、大学や研究機関が保有する研究・技術成果の社会的活用のあり方とか、大学や研究機関の研究・技術成果とベンチャー企業との関連性や、地域で活動する企業等が抱える技術的課題を協同で解決することができる産学連携の多様な形態を構築する必要もある。それはベンチャー企業という領域を部分的には越える面があるけれども、関西地域における大学や企業に蓄積されている技術的シーズの社会的活用や技術移転促進のあり方を射程に入れることを反映する。
このような地域社会や関西地域に固有の課題を研究し、意見・情報が交換される場を確保するためには、日本ベンチャー学会と協調しつつも、活動を独自に展開していくことが望ましいと考え、新たに「関西ベンチャー学会」を設立することとした。学会の目的は、関西経済の活性化や起業家育成のための教育・研究と実践体制への支援を目指しつつ、企業活動の国際化も視野に入れた地域経済社会のバランスある発展に貢献できる人材を涵養することでもある。とくに、新産業・新事業創造や新しい生活文化の提唱を関西地域から推進していく上で、必要となる知識は単に机上で描かれる理論的なものにとどまらず、実体経済社会の中での具体的活動と結びついたものとして検討され学習される必要もある。
具体的な活動としては、1) ベンチャー企業それ自体やベンチャー企業に関する政策のあり方を研究すること、および、2)関西のベンチャー企業あるいはそうした志を持つ人々を総合的に支援することを柱とする。また、学会運営は、分科会形式を主とし各会員の専門的関心に即した活動を深めていくこと、ベンチャーに関心をもつあらゆる個人に開かれた学会とすること、そして研究者とベンチャー企業家・予定者および支援者の協力による自主的な運営を目指すことなどを基本方針とする。
以上のような設立趣旨から、「関西ベンチャー学会」においては、研究活動はもとより、「実践的な思考とマネジメント手法」の教授など、研究能力・活動能力の系統的涵養をも目指す。つまり、「関西ベンチャー学会」は、関西に立地する大学における理工学系の人にも参加いただき、産学協同(ベンチャービジネス・ラボラトリーの活性化やTLO活動の推進など)と大学のインキュベーションのあり方なども重要課題として取り上げていく。これらを通じて、ベンチャー企業が創出されるために政策、事業展開、人材育成等の面でいかなる条件を克服すべきかを学術・実践支援の両面から考察し、その成果を適宜社会に提言していく。