第44回文化観光研究部会のご報告~夢童由里子さんを偲んで
第44回文化観光研究部会が、3月28日に開催されました。当初は、からくり人形作家の夢童由里子さんを講師にお迎えし、名古屋城本丸御殿の復元をはじめ、名古屋のまちの活性化に取り組んでこられたご苦労話をお聞きする予定でしたが、夢童さんは3月21日、心不全のため急逝されました。
このため、午後3時からの大阪城公園内見学の後、午後4時から開かれた研究部会では、夢童さんの講演に代わり、清水宏一主査と坂川弘幸幹事がそれぞれ、「京都市の観光の現状と新しい観光の仕掛け」、「大阪万博が日本の発展に貢献した事例」を発表しました。
夢童さんには以前にも文化観光研究部会でご講演いただいたことがあり、大変お世話になりました。また、そのエネルギッシュなお仕事ぶりに、個人的に尊敬の念を抱いておりました。ご逝去されたことは痛恨の極みです。謹んでご冥福をお祈り申し上げたいと思います。(写真中央は在りし日の夢童さんです)
坂川弘幸
以下、清水宏一主査の追悼文を掲載します。なお、文化観光研究部会の主査と幹事の交代もこの日ご提案し、参加者の皆様からのご了承を得ましたので、併せてご報告申し上げます。
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今回のベンチャー学会文化観光部会の客員講師は、夢童由里子先生。
彼女は、からくり時計の作家であり、2005年の愛知万博で恒久モニュメントとして会場に建てられた「日本の塔・月」の作者である。地元名古屋では、春姫道中や名古屋城本丸御殿復元の旗を振り、さらには、各種のイベントでのプロデユーサーを務める超有名人。その彼女を呼んで、桜の花の咲き始めた大阪城を見学し、その後、今、世界中から注目が集まっている「ユニークベニュー」と「観光MICE」について考えるシンポジウムを開催する計画だった。
ところが、いつまでたっても彼女が顔を見せない。昨夜から電話を続けているが、一向に返事がない。今日は土曜日で事務所は休みだ。「はて、こまった!」ときらめかけてふと気が付いた。本郷さん、本郷さん!!先生の助手の本郷さんがいる!
本郷さんは夢童さんの秘書だから、聞けばわかるだろうと思ったが、こちらも一向に電話が通じない。何度か、留守電にメッセージを残したが、それでも一向に返事がない。そのうち、「メモリーが満杯になりました」のメッセージが流れる。途方に暮れてしまった。
大阪城から会場である追手門大学まで歩く間に、やっと電話が鳴った。本郷さんだ!
「清水さん、連絡が遅れてすみません。なにせ、急なことだったものですから。夢童先生、亡くなったの!!」
ガーンである。「なぜ!!」往来の真ん中で、大声で立ちすくんでしまった。つい先日まであんなに元気だったのに。それに「春姫道中」も直前である。聞けば、心不全でなくなり、葬儀は家族だけで行われたようだ。
もうベンチャー学会の開会まで、あと20分しかない。とりあえず会場に急ぐと、聴衆がそろそろ集まりかけている。全員が入場したところで、事情を話す。全員があっけにとられて言葉がない。僕も長い間、講演会やシンポジウムを続けているが、こんなことは初めてだ。
とりあえず、僕が講師に成り代わって京都市の観光の現状と新しい観光の仕掛けを語り、坂川さんが、万国博が日本の発展に貢献した事例を発表することにして、部会を開始した。
話が盛り上がって、万国博の話が出た途端、誰も席を立たないし、動いてもいないのに突然、暗幕がザアーという音と共に動きだし、止まったかと思うと、また上に上がっていった。「誰か動かしましたか?」と聞いたが、誰も何もしていない。暗幕を上げ下げすると、ちゃんと動く。「夢童先生だ!!」と、皆が言い出した。
合掌
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以上です